- From: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Date: Wed, 09 Dec 2020 10:18:52 +0900
- To: "Atsushi Shimono (W3C Team)" <atsushi@w3.org>, public-i18n-japanese@w3.org, 木田泰夫 <kida@mac.com>
木田 様 下農 様 小林 敏 です. 木田泰夫 さんwrote >このベースラインを使うシステムの中にどう組み込むかについて、将来の国際化 >JLReq において何らかの指針を示せないでしょうかね。 >同時に欧文のフォントとの合わせ方なども。この辺りの設計がお粗末な例を現実に見 >るにつけ、JLReq で何か言えれば少しは改善するのかなと。 前者の問題は,Natさんも書かれていますが,私の手にはおえない.日本語で ベースラインまたは,アッセンダーとデッセンダーで考えろと言われても,ちょ っと困る.アッセンダーとデッセンダーと,文字サイズの関係はどうなっている のかな? 文字サイズは関係ないのかな? そこにある文字のアッセンダーとデ ッセンダーだけ見て処理しているのかな? 後者のラテン文字との混植について,書いてみました.ご検討ください. "Atsushi Shimono (W3C Team)" さんwrote > これを含めてベースに(膨らませて?)資料としてひとまずissueに上げます? > 木田 >さん 上げるなら,以下に取り換えてください.少し補足しました.文章の一部を直し ました. 和文文字(漢字と仮名)とラテン文字の混植 和文文字とラテン文字は,文字設計の考え方が基本的に異なっている.つまり, 和文とラテン文字はデザインの面からみると異質な文字である.それを組み合わ せる組版では,いろいろな問題が出てくる. 特に行送り方向の位置をそろえる問題については,活字組版時代から意見の相違 があった.例えば,“和文に対して,ラテン文字を下げろ”,“下げるとおかし い”,“ラテン文字の文字サイズを大きくした方がよい”,“それはフォントを 選ぶ際に注意すればよいことでしょう”,……,といったように,そこでは共通 の認識に到達することは難しい面があった. また,ラテン文字列が,大文字だけ,小文字だけ,しかも短字(a,c,eなど)だ けと条件が揃っていれば,ある程度の正解はでてくる.あるいは装幀で本のタイ トルを処理するように個別ケースで,時間を掛けることが可能な場合は,たぶん 正解は出てくる.しかし,各種の字形が出てきて,しかも機械的な処理をする場 合は,ある程度の線で妥協しないといけない. そこで,一律の処理を前提とした場合における,和文の明朝体とラテン文字の混 植におけるフォントの選択等の問題についてまとめてみた. 1 画線の太さが一様でない(変化している)明朝体とそろえ,ラテン文字は ローマン体を選ぶ. 2 文字の画線の太さも似たものを選ぶ(和文のブロックの濃度とラテン文字 のブロックの濃度をそろえる). 3 明朝体の仮名とのバランス(明朝体の仮名は漢字の明朝体とは画線の設計 が異なる,その意味で仮名は明朝体とはいえないかもしれないが,漢字と合う仮 名を作製してきた)を考慮し,その線のカーブが似たものを選ぶ.例えば,ボド ニーのように直線的な画線のフォントを選択しない(漢字だけだと似ている感じ はあるが). 4 字面の大きさを考慮し,また,通常は混組に使用されるラテン文字は小 文字が多くなるので,字面が和文とラテン文字との大きさのバランスを考慮し, ラテン文字はできるだけ“x-height”の大きなものを選ぶ.もちろん,和文より ラテン文字のサイズを大きくする方法もあるが,通常は,同じサイズでよい. 5 横組(縦組で文字を横に回転した場合を含む)の場合,仮想ボディの天地 左右中央の位置にある和文に対し,短字のラテン文字,あるいは大文字をを並べ ると和文の下端(縦組では左端)より,字面が上がって(縦組では右に寄って) 見える.しかし,この位置を変えるとアッセンダーとデッセンダーがある小文字 が行間にはみ出してしまうかもしれない.そこで,和文と欧文の仮想ボディの位 置を揃えるしかないということになる.多少は不満が残るがやむをえない.(活 字組版では,長い間,この方法で処理してきた).(もちろん,個別のケースで フォントのサイズやフォントの選択などにより,位置の調整は施すことは採用し てもよいが,それがデフォルトということではないということである). したがって,和文文字にベースラインを設定して,その位置を考慮して組むと いう必要はない.和文文字のベースラインをどこに設定しても(たぶん,仮想ボ ディの上端から88パーセントの位置が正解に近いかもしれないが),その和文の ベースラインにラテン文字のベースラインを揃えれば正解が出てくるということ にはならない. 6 和文フォントにはプロポーショナルのラテン文字を含んでいる例が多い (以下,付属文字という).そこで,ラテン文字に,この付属文字を選ぶか,別 のラテン文字のフォントを選ぶかが問題になる.和文文字を組み合わせるラテン 文字の条件を前述したが,付属文字は,そのことを考慮して設計されていると思 われる.その意味では,通常は,この付属書体を選べばよい.もちろん,その付 属書体を使用しないで,別のフォントを選ぶことも可能であるが,その選択は, それなりに経験のいることであり,それをデフォルトとする必要はないであろう. 7 フォントの選択にもよるが,ラテン文字の行送り方向の字面と仮想ボディ との空白(サイドベアリング)は,和文文字より狭いのが一般的である(1字1字 の独立性がややある和文文字と主に単語を単位に読んでいくラテン文字との差異 による).そのような和文文字とラテン文字をベタ組で配置すると,和文とラテ ン文字の字間が詰まった印象を与える.そこで,活字組版時代には,和文とラテ ン文字の字間として四分アキにしていた.今日では,この和文とラテン文字の字 間は,必ずしも四分アキにする必要はないが,なんらかのアキを確保するのが望 ましい.(混植のパターンもラテン文字1字の場合,単語の場合,複数の単語の 場合,文字種もアラビア数字,小文字,大文字といったように各種のパターンが あり,一律の処理を前提にしたときは,個別ケースでは多少はバランスを欠く配 置となるケースも出るが,それはやむを得ないことであろう.) 8 和文の(ある程度の画線の太い)ゴシック体との混植について,少しだけ 補足しておく.和文のゴシック体との混植では,以下の2つの方法がある. a ラテン文字のサンセリフと混植する b ラテン文字のローマン体で画線の太いボールドと混植する この場合,aは画線のデザインと画線の太さをそろえているのに対し,bが画線の 太さだけをそろえている.和文でもゴシック体の漢字とアンチック体(明朝体風 の仮名で画線を太くしたフォント)の仮名を組み合わせる例があり,それなりに バランスをとれているので,bの選択もありえるが,通常は,aの方が望ましいと いえよう.(ゴシック体の漢字とアンチック体の仮名の組合せは活字組版時代に も行われていた.ただし,その当時は仮名のゴシック体のデザインに優れたもの がなかったので,やむなくアンチック体を選んだことによる.最近は漫画の台詞 では積極的にゴシック体の漢字とアンチック体の仮名の組合せが選ばれている. これは漢字と仮名との差異をある程度とることにより,漢字という語句のまとま りをはっきりさせるという効果を考えたものと考えられる.),
Received on Wednesday, 9 December 2020 01:19:33 UTC