- From: Yasuo Kida (木田泰夫) via GitHub <sysbot+gh@w3.org>
- Date: Thu, 05 Sep 2024 02:05:55 +0000
- To: public-i18n-archive@w3.org
●●2.日本語組版の基本 メモその4 ―縦組と横組 行頭の●などは見出しのレベルを示す 行頭の“*”の記号のあるものは注である. ■2.4 横組と縦組の組版処理 ●2.4.1 組方向の変更 1 組方向(縦組と横組)とその変更の必要性 日本語組版の組方向には,縦組と横組がある.この縦組と横組では,表記の方法や組版処理でいくつかの相違点がある. 印刷される書籍などでは,通常は組方向は変更されない.一定に決まっているので,表記の方法や組版処理において,その決まった組方向の表記の方法や組版処理を行えばよい.これに対し,デジタルの出版物では,組方向の変更は可能であり,また,読者の好みに応じるためにも,アクセスビリティの面からも,組方向の変更は実現できることが望ましい. そこで,組方向の変更に伴う表記法や組版処理の相違点をなんらの方法で解消しておくことが望まれている.ただし,この組方向の変更方法は,現在は確立されているとはいえない.そこで,ここでは,どんな問題があるかを主に,いくつかの方法を示すことにする. *縦組と横組の読みやすさについては,いろいろな意見があり,また,その差異も大きいとはいえず,共通の理解には至っていないようである.最近は,横組の方が読みやすいという報告も見られ,また,アクセスビリティの面からも横組が望ましいという指摘も出ている.しかし,個人的な経験から横組は読みにくいという印象を述べる人もいる.読書では,慣れの問題が大きいと思われる.組方向は,従来は主に原稿の内容や読者対象によって決定されていた.これからは,内容だけでなく,個々人により,それぞれの読みやすさ,与える印象などにより異なることが予想されので,読み手の側で組方向が選択できるのが望ましいといえよう 2 組方向の変更のレベル 組方向の変更では,以下のようなレベルが考えられる. 1 元データを何も加工しないで,組方向だけをそのまま変換 2 最低限の機械的処理で組方向に応じた形式に変更可能なものは処理して変換 3 縦組と横組のそれぞれの編集方針により,組方向に応じた形式に変換 レベルの1では元データに手を加えないで,組方向だけを変更するもので,読者に奇異な印象を与えるケースが出る恐れもある.読者は,読むことはなんとか可能というレベルである.類推して読んでいく必要な箇所もでてくる.なお,このケースでは,何らかの方法で,どちらの組方向で読むのが望ましいかを示しておくという対応も考えられよう. レベルの2は,読者に奇異な印象を与えないで読んでいけるレベルである. レベル3は,著者または編集者の方針に従い,また,読みやすさを考慮した表記法や組版処理を行う. なお,新しく原稿を作成する場合は,組方向の変更を前提とした原稿作成を心掛けることも必要である.方法としては,以下が考えられよう. 1 縦組でも横組でも問題がでないように表記法を工夫する. 2 縦組と横組の場合の2つの処理内容を記述しておく. ●2.4.2 縦組と横組で字形等が異なる例 縦組と横組で字形や文字の外枠中の配置位置が異なる例がある.これらは,これらは通常,組方向の指示に応じて自動的に修正される. 1 字形が異なる例 —波ダッシュ(~) *活字組版では,横組で使用するものをそのまま90度回転していたが,今日では,縦組では横組の字形を反転させて字形を使用しているのが普通である. —音引(ー) *活字組版では,縦組の字形のものを横組で横転して使用していた例もある.これは横組用の音引が準備されていなかったので,やくなく使用していたもので,推奨される形式ではない. 2 字形の位置が異なる例 —句読点 句点(。),読点(、) *コンマ(,)とピリオド(.)は,原則として縦組では使用しないが,例外的に使用している例がある.この場合,句点(。),読点(、)と同様に位置を直さないといけない. —二の字点(〻) 二の字点には,字形が大きい場合は,縦横で共通である.しかし,字面を小さくし,縦組では右寄せ・天地中央,横組では天地中央,下寄せにした例がある.この場合は,縦組と横組で文字の外枠に対する位置を変更しないといけない.なお,二の字点は,々(同の字点)と用法が似ている.例えば,“各々”は“各〻”とも表記される.後者は漢文の読み下し文などで見かける.“各”は,1字でも“おのおの”と読むことができるので,“各々”とすれば“おのおのおのおの”になってしまう.そうではなく,“おのおの”と読むということを念のために示す,補足的な記号として使用されている.現代文では“〻”は使用されていない.“益〻(ますます)”“愈〻(いよいよ)”“交〻(こもごも)”“屡〻(しばしば)”“偶〻(たまたま)”などの例がある. —小書きのかな っッゃャァィなど 縦組では右寄せ・天地中央.横組では天地中央,下寄せにする 3 文字の向きを変更する例 —コロン(:) *セミコロン(;)は,原則として縦組では使用しないが,例外的に使用している例がある.この場合,コロン(:)と同様に向きを変更しいといけない. —二分ダーシ(–) —全角ダッシュ(—) —二重ハイフン(=) —2点リーダ(‥) —3点リーダ(…) —括弧類 (),「」など *ダブルミニュートは,横組では原則として使用しないが,例外的に使用している例がある.その配置方法にはいくつかの方法がある. ●2.4.3 数字の表記と組版処理 1 原則とする数字表記 数字の表記については,従来は,縦組では漢数字,横組ではアラビア数字を使用するのが原則であった.縦組でのアラビア数字の使用は,特別な場合に限られていた.また,横組での数字表記もすべてアラビア数字ということではなく,訓読みの数字や順序数などでは漢数字も使用されている.したがって,細部の違いを無視すれば,数字表記の方針としては以下のように分けられる. 1 主に漢数字を使用(主に縦組) 2 原則としてアラビア数字を使用,ただし,訓読みの数字や順序数など一部は漢数字を使用(縦組または横組) 3 主にアラビア数字を使用(主に横組) 最近では,縦組でも横組にならいアラビア数字を使用する例が増えている. *漢数字の表記では,“十・百・千・万など”の単位語をどの程度使用するかという点でいくつかの方法がある.また,単位語を使用しないで位取りを入れる方法もある.現在は,位取りを入れないで,単位語には“万・億”等だけを使用するという方法が多くなっている. *“四日市市”,“五重の塔”,“五十歩百歩”などの固有名詞や慣用句などでは,横組でも漢数字を使用する.また,慣行として横組でも漢数字を使用する例には,化合物の名称(例:二酸化炭素,六価クロム)などがある *慣行として縦組でアラビア数字を使用する例には,“国道16号”や“第1四半期”などがある. 2 原則とする数字表記の変換 原則とする数字表記が2であれば,組方向の変換での表記法の手直しは必要がない.ただし,縦組でアラビア数字を処理する方法はいくつかあるので,その対応は必要になる(詳細は,“2.3.7 縦組の中に挿入されるアラビア数字とラテン文字”参照). 原則とする数字表記の1または3が問題となる.しかし,数字表記は,著者の考え方により選択されている場合があり,この場合,著者の了解が必要になる.横組での漢数字表記は,読者にいくらかの違和感を与えるとしても誤解を与えるものではない.縦組でのアラビア数字は徐々に社会にも受け入れられている.また,漢数字とアラビア進字の機械的な変換は簡単ではない.したがって,特に変更しないで,そのまま組方向を変換するという方法が現実的な対応であろう. *漢数字とアラビア進字の機械的な変換が難しいのは,現在のところ大方を納得させる確定した数字の表記法がないことも理由である.そのうえ,変換を行うためには,内容を考慮して行う必要がある.今後の課題であろう. *数の表現としてアラビア数字のほうが,単位語を必要とする漢数字よりは優れている.しかし,今日では漢数字でも“十・百・千”の単位語を使用しない方法が増えており,その差異は,やや縮まっている. 3 見出しや箇条番号の処理 見出しの先頭にラベル名と番号を付ける例は多い.見出しでは,その括り方のレベルを示すことが大切である.ラベル名と番号の形式は,この見出しのレベルを示す役割を果たしている. 見出しの番号には,横組では主にアラビア数字を使用する.ポイントシステムとよばれる形式も,主に理工学書などでは採用している.ポイントシステムは,見出しのレベルを示すとういう点で優れている. 縦組では,漢数字以外にアラビア数字やローマ数字も使用する. 日本語組版では,見出しのレベルを示す方法としての慣行がある.おおよその段階を示すと,以下のようになる(下にいくに従いレベルが下がる).このレベルの差異は箇条書きにも該当する. ローマ数字の大文字(または時計文字) I, II, Ⅲ, … ラテン文字の大文字 A, B, C, … 漢数字 一,二,三,… アラビア数字 1, 2, 3, … ラテン文字の小文字 a, b, c, … 括弧付きのアラビア数字 (1),(2),(3),… 括弧付きのラテン文字の小文字 (a),(b),(c),… さらに小見出しなどでは,ローマ数字の小文字や丸中数字(①,②,③,…)などが使用されている. したがって,こうした番号の付いた見出しを含む場合,組方向の変更に伴い何らかの対応を考えたときは,内容を見て判断する必要がある.番号そのもので誤読させる恐れは少ないので,変更しないで処理するのもひとつの対応であろう. *見出しのレベルを示す方法は,文字サイズ・フォントや配置領域の大きさ(行取り)などで示す方法がとられている.しかし,その方法ではレベルを認識できないケースもある.その意味で,ラベル名や番号で見出しのレベルを示すことは意味がある.最近はラベル名を付ける例が減っているが,ラベル名は,見出しのレベルの認識を増大させる効果も大きいので,その利用は望ましいといえよう.一般に,以下に示すラベル名は,全部ではなく,部分的に使用する例が多いが,そのおおよそのレベルを示すと以下のようになる. 巻 第1巻 編 第1編 部 第1部 章 第1章 節 第1節 項 第1項 横組でのポイントシステムを縦組に変更する場合,やや面倒である.縦組でのポイントシステムの使用例は少ないが,実例はある.次のような処理が考えられるが,いずれもバランスはよくない. —そのまま横転させて配置 —アラビア数字を縦向きにし,ピリオドを数字の後ろに配置 —アラビア数字を縦向きにし,ピリオドを中点に変更 —アラビア数字を漢数字に,ピリオドを中点に変更 ●2.4.4 ラテン文字等の処理 ラテン文字等の縦組から横組への変換では,以下の処理が必要になる. —全角のラテン文字等は,プロポーショナルなラテン文字等に変換するのが望ましい. —縦中処理を行った箇所は,プロポーショナルなラテン文字等を使用しているので,書式だけ解除すればよい. 横組から縦組への変換では,以下のような方法がある. —何も対応をとらないで,組方向だけ変換する.この場合,横組でプロポーショナルなラテン文字等である場合,横転して配置されるが,読めないわけではないので,それを許容する.なお,全角のラテン文字を使用した箇所は,縦向きに配置される. —1字1字を縦向きとする,縦中横で処理する,または横転して配置する箇所を決めて,それぞれの対応した処理を行う. *1字の場合,縦中横処理で縦向きにできるので,例えば2字以下は縦中横処理で処理するなどの機械的な整理も考えられよう. ●2.4.5 縦組と横組の句読点 1 原則的に使用する句読点 原則的に使用する句読点は,縦組では読点(、)と句点(。)であるが,横組では3つの方式がある. 1 コンマ(,)とピリオド(.)を使用する. 2 コンマ(,)と句点(。)を使用する 3 読点(、)と句点(。)を使用する. これらは出版物の内容により選択されていた.ラテン文字やアラビア数字の多い場合は,これらとの整合性をとるために1が選ばれていた.2に“公用文作成の要領”(1952年)で規定されている方法で,公用文や教科書などで採用されている方法であり,一般の出版物でもこれにならった例がある. 3は,縦組にならった方法で,ワープロのデフォルトの設定が,読点(、)と句点(。)であることから,今日は,この形式を採用している例が増えている. *“公用文作成の考え方(2022年,文化審議会建議)” (2021年)では,“句点には「。」(マル),読点には「、」(テン)を用いることを原則とする.横書きでは読点に「,」(コンマ)を用いてもよい.”となっている.したがって,今後は横組の公用文などでも句点(。)と読点(、)の使用が増えていくと思われる. *横組の句読点としてコンマ(,)とピリオド(.)が選択されるのは,欧文やアラビア数字の使用が多い場合である.この場合,欧文やアラビア数字に伴う句読点と和文の句読点の整合性をとるために,和文に欧文用の句読点を使用するひとつの理由がある. したがって,縦組を横組に変換する場合は,特に必要がある場合は,コンマ(,)やピリオド(.)に変換する必要があるが,一般的には,読点(、)と句点(。)のままでよい. これに対し,横組でコンマ(,)やピリオド(.)を使用している場合は,コンマ(,)は読点(、)に,ピリオド(.)は句点(。)に変換する必要がある. *引用文でも同様の問題がある.引用元が横組でコンマ(,)とピリオド(.)を使用した文章を縦組で引用する場合,原文通りに引用することが原則であるが,一般に,これらは読点(、)と句点(。)に変換して引用する. 2 箇条番号の後ろの句読点 箇条番号の後ろの句読点については,縦組の漢数字の後ろは読点,横組のアラビア数字の後ろはピリオドという形式が従来は一般的であった.これにならい,縦組のアラビア数字の場合にも読点を使用する方法がある. *箇条番号の後ろの句読点を行の調整処理に使用すると,縦組でいえば,箇条書きの本文先頭の横並びがそろわなくなり,好ましくない.調整処理に使用しないほうが望ましい. *横組のアラビア数字の後ろをコンマ(または読点)とする例もあるが,これは読者に違和感を与える. したがって,横組と縦組の組方向を変換を考えた場合,箇条番号の後ろの句読点については,なんらかの対応が必要である.箇条番号の後ろに句読点を使用しないで,全角アキ(丸中数字ではベタ組または四分ア)にする方法もあるので,このような方法を採用すれば,数字表記を除外して,問題は回避できる.なお,箇条番号を括弧で括った場合は,その後ろには句読点は付けない. なお,横組の箇条書きの番号の後ろのピリオドを縦組にする方法としては,以下がある. —“、”に変更する. —“.”(欧文用)を使用し,縦中横にする. —“.”を使用し,縦向きで配置する. 2番目や3番目とする例はあるが,バランスは,あまりよくない. *箇条番号を括弧でくくる場合,横組では,後ろだけとする方法がある.番号の後ろにだけ括弧を付ける方法を縦組でもごくたまに見かけるが,この方法は縦組では一般的ではない. 3 小数点と位取り 日本語組版において,アラビア数字で小数点を示すにはピリオド,3桁の位取りを示すにはコンマを用いる.この場合のピリオドとコンマは,欧文用を使用し,前後はベタ組である.表などでは,数字の字幅にそろえ,ピリオドとコンマを二分の字幅にした例もある. ただし,アラビア数字または漢数字を縦組で縦向きにする場合(アラビア数字を横転する場合を除く),小数点には中テン(・),位取りには読点(、)を用いる. *小数点の中点(・)および位取りの読点(、)の占める領域を全角とする例もあるが,中点の前後の四分アキ,読点の後ろの二分アキを削除するのが原則である. 縦組の漢数字表記を横組でも,そのままとする場合は,小数点の中点や位取りの読点はそのままでよい.これに対し,縦組の表記がアラビア数字の場合,これを横組にするときは,小数点をピリオドに,位取りはコンマに変換する必要がある. *横組,特に理工学書などの場合,位取りとして四分アキにする方法がある.この場合,アラビア数字を横転して配置すればよい.アラビア数字を縦向きにする場合は,読点に変更するのが望ましい. ●2.4.6 縦組と横組の括弧類 1 コーテーションマーク 縦組でコーテーションマークを使用する例も見かける(これは,ダブルミニュート(〝〟)を使用するのが原則である).縦組で使用しているコーテーションマークを横組に変換する場合は,そのままでよい. これに対し,横組の和文文脈でかぎ括弧の代わりにコーテーションマークを使用する例がある.これを縦組に変換する場合は,なんらかの対応が必要である. コーテーションマークを使用する場合,1のようにシングルを優先して使用する方法と,2のようにダブルを優先して使用する方法がある.2の方法が多い. 1)` " " ' 2)" ` ' " *横組のコーテーションマークは,以前はかなり使用されていたが,最近はやや減っているように思われる.なお,JISの規格票では,かぎ括弧を用いないでダブルコーテーションマークを使用している. 横組でのコーテーションマークの使用では,かぎ括弧をいっさい使用しない場合と,囲む内容によってかぎ括弧とコーテーションマークを使い分けて使用する方法がある. なお,参考文献の表記では,書名はダブル,論文名はシングルを使うのが慣習である. *横組でのかぎ括弧の代わりにコーテーションマークを使う理由として,横組ではかぎ括弧(特に終わりかぎ括弧)の形がよくないことを挙げる人もいる. *日本語組版における引用符としてはかぎ括弧およびコーテーションマークのほかに山括弧や二重山括弧も使用されている.山括弧や二重山括弧の場合,組方向の変換では,そのままでよい. 縦組から横組の変更 1)横組でもかぎ括弧の使用法はあるので,縦組でのかぎ括弧をそのまま横組で使用する. 2)横組ではコーテーションマークを使用する方針の場合は,まずダブルを原則とするか,シングルを使用すかを決め,それに従い変更する.ただし,参考文献は,参考文献の方法により変更する. 横組から縦組の変更 コーテーションマークを使用している場合は,かぎ括弧等に変える必要がある. 1)かぎ括弧を使用している場合は,そのままでよい. 2)かぎ括弧を使用していないで,すべてコーテーションマークを使用している場合は,次の2つのケースがある. —ダブルを主に使用している場合は,ダブルコーテーションマークをかぎ括弧に変え,シングルコーテーションマークを二重かぎ括弧に変更する.ただし,参考文献では,本文部分と異なる処理が必要となる. —シングルを主に使用している場合は,シングルダブルコーテーションマークをかぎ括弧に変え,ダブルコーテーションマークを二重かぎ括弧に変更する. 3)ダブルコーテーションマークとかぎ括弧を使い分けている場合は,ダブルコーテーションマークをダブルミニュート(チョンチョン)か山括弧などに変更する. *かぎ括弧を入れ子にする場合,内側のかぎ括弧を小カギにする方法があるので,この場合は,また変わってくる. 2 ダブルミニュート 縦組でダブルミニュート(チョンチョン)を使用した原稿を横組で表示する場合,次の3つの方法が考えられる。 1)山括弧(〈〉、《》)など、別の括弧に変更する 2)JIS X 0208の考え方に従い、ダブル引用符(“”)に変更する 3)ダブルミニュート(〝〟)のままとする 3 ブラケットと亀甲括弧 大括弧(ブラケット)と亀甲括弧には,引用文において引用者の補足を示す,という似た用法がある.この場合,縦組では亀甲括弧を使用し,横組ではブラケットにするという考え方がある.この場合は,組方向の変更で,それぞれの括弧に変更するとよい. ●2.4.7 縦組と横組で注意が必要な行処理等 1 ルビ処理 横組では,原則として親文字とルビ文字の字詰め方向の中心をそろえる.縦組では,字詰め方向の中心をそろえる方法もあるが,そろえない方法を採用する出版物は多い. したがって,縦組から横組に変更する場合,親文字とルビ文字の字詰め方向の中心をそろえる変換が必要になる場合がある.逆に横組から縦組に変更する場合は,特別に理由がないかぎり変更しなくてよい. *縦組においても最近は,親文字とルビ文字の字詰め方向の中心をそろる方法が徐々に増えている. 2 単位記号 単位記号は,縦組では,以下のような方法がある. —カタカナで表記する —ラテン文字等の記号を使用する(縦中横で処理している例もある). —㎝,㎞などの合字がある場合は,合字を使用する. 横組では,カタカナを使用する例もあるが,原則としてラテン文字等の記号を使用する.合字は,通常は使用しない. 縦組から横組に変換する場合,必要に応じてカタカナの単位記号をラテン文字等の記号に変換する.㎝,㎞などの合字は,通常の記号に変換するのが望ましい. 3 圏点 縦組では,一般に﹅(U+FE45,ゴマ点という)を使い,横組では,一般に●(U+25CF)を使う. したがって1種類の圏点だけ使用している場合に組方向の変換を行うときは,それぞれのものに変換するのが望ましい. 2種類以上の圏点を使用する例は,最近は多くないが,明治時代のものには例が多い.2種類以上の圏点を使用している場合,﹅(U+FE45)や白ゴマ(U+FE46)を使用しているときは,これらを変えるか,変えないか決めて処理する必要がある. なお,圏点を配置する位置は,縦組の場合は右側,横組の場合は上側に付けるのが原則である.いずれも行送り方向では先頭側になる. 4 下線・傍線 縦組では,右側に傍線を付け,横組では下側に下線をつけるのが原則である.縦組では行送り方向では先頭側,横組では行送り方向では末尾側になるので,注意が必要である. 5 添え字 縦向きにする場合は,方法は決まっていない.以下のような方法が考えられる.ただし,2と3は,下付きか上付きかがあいまいとなり,望ましくない. 1)縦中横にする. 2)親文字の下側に,文字サイズを小さく,右寄せにして配置 3)親文字と同じサイズで,親文字の下側に配置する. したがって,縦組での添え字は,横転して配置するのが望ましい. 6 ぶら下げ組 横組では,採用しないという考え方もあるが,横組の書籍等でも,よく見かける. 7 段落の先頭 段落の先頭行では,1字下ガリとする方法が一般的である.しかし,横組では,見出しの直後の段落,あるいは全ての段落について,段落の先頭行を1字下ガリとしない方法を採用している例がある.縦組では,その方法を採用している例は少ない. したがって,この方法を採用している横組を縦組に変換する場合に,1字下ガリとするか,しないか決めて処理する必要がある. 8 その他 参照する場合等で,縦組では“上に・下に”,横組では“右に・左に”といったような向きを示す言葉が使用される例がある.組方向を変更した場合,こうした言葉は変更しないといけないときがあるので注意が必要である.また,方向を示す矢印でも同様な問題が発生する恐れがあり,同様に注意が必要である. ●2.4.8 縦組と横組で異なる注等の配置処理 1 注 注の配置方法は,縦組と横組では,傾向として,いくつかの違いがある. 横組では脚注が多い.この形式の縦組で近い形式は傍注である.縦組で多いのは後注形式であり,章などの末尾または巻末にまとめる例が多い. *後注形式では,従来は段落の末尾に挿入する例が多かったが,最近はあまり見かけない.この段落間に挿入する処理は,活字組版での手作業に比べ,コンピュータ組版での自動処理,特に行間の自動処理が,それほど簡単ではないことが理由かもしれない. *注というものは,できるだけ近くにあると,すぐに参照できて,たしかに便利である.割注の要望が根強いのも,そうした理由からであろう.しかし,確実に参照が予定され,しかも,分量が短い場合は,それでもよい.しかし,注は必ずしも参照されるわけではなく,注が文章の途中にあると,読んでいく際の妨げになり,注を邪魔に感じる場合もある.その意味で,近くにあるのが望ましいが,本文の読んでいく際の妨げにならないようにしてほしいという矛盾した要求がある.この要求を比較的に満たしているのが横組の脚注であり,縦組の傍注である.横組の注として最も多いのは脚注形式であるのは,そんな理由があるからだろう.縦組の傍注は,かつては組版処理が面倒であることから,あまり見かけなかったが,最近はやや増えている. 並列注は,横組ではサイドノートとなるが,縦組では頭注か脚注になる.書籍のサイドノートでは,見開きに左右に配置する方法と,各ページに右側に配置する方法とがある. 注記の番号については,縦組では,行中に添え字ではなく文字サイズを小さくして配置する方法と,行間に配置する方法の両形式が採用される.横組では行中に添え字の形式で配置する例が多く,行間に配置する方法は少ない.縦組の注記番号に漢数字を使用する例もあるが,最近ではアラビア数字の使用が多い. 行中に注番号を挿入する場合,横組では番番号の後ろにだけパーレンを付ける例が多いが,縦組では両側に付ける例が多い. *注番号の形式に,*,**,…,と“*”の個数で示す方法,*,†,‡,…,といった記号の順番で番号を示す方法がある.この形式の注番号は,かつては使用されていたが,最近は少なくなっている. *縦組の古典などでは注の番号に漢数字を使用している例がある.この場合,漢数字の天地を50%に縮小するのが一般的である(平字という).これを横組にする場合は,アラビア数字に変えた方がよいであろう. 縦組の後注では,字下げを行うのが一般的である.これに対し,横組の脚注では,行長の半端があれば行頭にとるが,それ以上の字下げをしないという例が多い. 注の行間については,縦組の後注に比べ,横組の脚注の方が狭くできる. 2 見出しの配置 字詰め方向の位置では,横組では左右中央という配置が多い.これに対し,縦組では左右中央という配置は少ない.頭そろえとして,大きな見出しから小さな見出しについて,順次,字下げ量を大きくしていく.横組で左右中央としない場合は,行頭より本文文字サイズで1字下ガリまたは下げない方法とする例が多い. 見出しの番号については,横組では,ポイントシステムのものがある.縦組では,ポイントシステムのものはほとんどない(少ないが例はある). 3 図版の配置 横組では,原則として回り込みを行わないという例が多い.縦組では,原則として回り込みを行わないという例は少ない.これは,1行の行長が,一般に横組では短いことによる. その結果,横組では段落間に配置する例が多いが,縦組では,ほとんどない. 図版のキャプションの組方向は,横組では同じとなるが,縦組の図版のキャプションは横組とする例が一般的である.したがって,縦組の図版番号もアラビア数字ということになる. 4 表の配置 横組では,本文の組方向と表の組方向が一致する.これに対し,縦組では,表を横組にする例が多く,本文の組方向と一致しないことが多い. 表の配置は,図版と同じである.横組では,原則として回り込みを行わないという例が多い.縦組では,原則として回り込みを行わないという例は少ない.その結果,横組では段落間に配置する例が多いが,縦組では,ほとんどない. 5 段組の末尾 段組にする場合,最終のページ(改ページ直前のページ)の処理が問題となる.横組では,各段の行数をできるだけ平均化する.これに対し,縦組では平均化しないで,“なりゆき”で処理する方法が一般である. -- GitHub Notification of comment by kidayasuo Please view or discuss this issue at https://github.com/w3c/jlreq-d/issues/5#issuecomment-2330458244 using your GitHub account -- Sent via github-notify-ml as configured in https://github.com/w3c/github-notify-ml-config
Received on Thursday, 5 September 2024 02:05:56 UTC