Re: [jlreq] 落語ネタ:ルビという小さな虫 (#323)

ルビは,そもそも必要なの,という議論が昔あった.山本有三が“戰爭と二人の婦人”(岩波書店,1938年)の“あとがき”で振り仮名(ルビ)の廃止を主張したことがきっかけで,多くの議論があった.その多くは白水社編“ふりがな廃止論とその批判”(白水社,1938年)という本にまとめられている.この本は,日比谷図書文化館,東京都の中央区や都立図書館などで所蔵しているので読むことができる.

ルビのように小さい文字は読みにくく,視力低下の重大な要因ともなり,そもそも,ルビを付けなくても読める,やさしい文章にすべきであるというのが山本の主張である.これに対し,橋本進吉は,同書のなかで多くのルビの効用を記し,ルビ廃止論に賛成していない.

こうしたこともあり,戦後に内閣告示された“当用漢字表”の“使用上の注意事項で“ふりがなは,原則として使わない”との説明もされている.この影響もあり,ルビの使用は一時は少なくなった.

しかし,書籍などではルビは使用されており,1981年の“常用漢字表”の答申前文では,“読みにくいと思われるような場合は,必要に応じて振り仮名を用いるような配慮をするのも一つの方法であろう”と述べている.今日では,書籍に限れば,ルビを使用していない例は少ないといえよう.

なお,ルビの代わりに親文字の直後に括弧に入れて示す,ポップアップで表示するという方法もある.括弧に入れて示す場合,数が少なければよいが,以前,すべての漢字について,その読みを括弧に入れて示したものを読んだことがある.とても読めたものではなく,読むのを途中で放棄した例もあった.また,ポップアップも数が少ない場合はよいが,数が多くなると,かえって読むのを妨げるケースもあるので,その方法は,完全にルビの代用になるとはいえない.

また,アクセシビリティを向上させるひとつの方法としてルビは有効であり,そのためには,ルビの機能をより利用しやすいように改良していくことが必要であろう.いくつか例示しておく.
 全部に漢字にルビを付ける(自動化されれば,なおよい).
 ルビが逆に障害になる場合もあり,ルビ表示をする/しないの選択を可能にする.
 更にいえば,ルビの性格(パラルビなど)や漢字の種類により,レベルをつけて,表示/非表示の選択ができるとよい,
 ルビの文字を大きくできるようにする.
 ルビに色を付けることを可能にする.
 親文字とルビの間隔は,文字の外枠を接して配置するのが原則であるが,選択により,この間隔を空けて配置できるようにする.

ただし,個々の人により要求内容の違いは大きく,要求内容が逆の場合もある.読者の側で変更が可能になるとよい.

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