- From: 道広 勇司 <neniu@moji.gr.jp>
- Date: Fri, 29 Apr 2011 17:24:33 +0900
- To: public-html-ig-jp@w3.org
道広です。 ※和欧間の空きの件などご返事しないままで申し訳ありません。まとまった 時間が取れないので,英文を読んだり,調べたりすることができず,メール も書きかけのままとなっています。 (11/04/29 15:39), Koji Ishii wrote: > 私が出版に携わっていたころは、和文書体中の欧文がよくなかったこともあり、欧文は欧文書体を使う、というのを頻繁にしていました。この時、書体デザインの違いや、指定フォントサイズに対する実ボディの比率の違いなどから、和文書体と欧文書体で別のサイズを使う、というのを頻繁にしていました。 本題からずれますが,「実ボディー」という用語は誤りで,「字面」や「バ ウンディングボックス」と呼ぶべきです。 「仮想ボディー」の「仮想」とは,写植やデジタルフォントにおいて,《金 属活字のような現実のボディーは無いが,それに相当するもの》の謂です。 > こういったことは、今でもされているのでしょうか? されているのだとしたら、CSS3 Fontsのfont-size-adjust[1]はこの用途に適していますか? > [1] http://dev.w3.org/csswg/css3-fonts/#font-size-adjust-prop 英文を読むのに時間がかかるので,すみませんが,まず読んでいない段階で 書かせてください。 印刷物で,和文と欧文に異なる書体を使う際に,サイズやベースライン位置 を違えることは現在もごく普通に行われています。 ことに,海外で制作された欧文書体は和文との混植など考慮せずにデザイン されているので,そのまま組み合わせるには無理があります。 たとえば,Garamond のようなエックスハイトの低い書体,カウンター(フト コロ)の小さい書体は同じボディーサイズ(フォントサイズ)では和文と合 いません。 そこで,ふつう,DTP アプリには「合成フォント」「組み合わせフォント」 などと言って,漢字・仮名・欧文などの文字クラスごとにフォント,サイズ 比率,ベースライン位置を個別に指定したものに名前をつけて保存・参照す る機能が備わっています。 アプリによって設定の自由度がかなり違います。 Antenna House Formatter では,「フォント構築ファイル」というもので設 定するようです。これの仕様が参考になるかもしれません。 http://www.antenna.co.jp/AHF/v5help/v52/ja/docs/ahf-font.html#font-configration-file 私はよく知らないので,これが十分に良いものかどうか判断できません。 重要なのは,サイズ比率だけでなくベースラインも動かせる必要があるとい うことです。AH Formatter では baseline-adjust で指定します。 和文デジタルフォントができたとき,和文にベースラインを持ち込んだのは 致命的な誤りだったと思っています。黎明期の簡易的便法としては妥当だっ たでしょうが,これが話をややこしくしてしまいました。 合成フォントを突き詰めると仮想フォントに行き着くはずですが,ウェブが そこに至るのはしばらく先だと思うので,ここでは述べません。 話を合成フォントの必要性に転じます。 DTP 黎明期には,次のような問題がありました。 ・最初の和文 DTP フォントはリュウミン L-KL と Times New Roman という ウエイト(太さ)がまったく合わないものを組み合わせた。 ・初期の和文フォントの従属欧文フォントは出来が良くなかった。 ・従属欧文にはダイアクリティカルマーク付きの文字が含まれていなかった。 ・従属欧文はローマンのみなので,イタリックが使えなかった。 これらはいずれもある程度解消されています。 その意味では,以前ほど合成フォントの必要性は切実ではなくなっているの かもしれません。 さきに述べたように,海外の欧文フォントを組み合わせるのは,それはそれ で難しい点があります。サイズやベースラインを調整しても,ウエイトは変 えられないからです。 書籍の本文に使う普通の明朝体と,海外製の普通のローマン体フォントでは, 後者のほうがウエイト感(見た目の太さ加減)がだいぶ大きいため,欧文部 分が黒々してしまうのです。エックスハイトの低い欧文を 110% とかに拡大 して使うと,ますます黒くなります。 ※日本製の,たとえば写研の Century Old Style は,オリジナルのものより 少しウエイトを抑えてデザインされていると思います。 以上は印刷物の話ですが,ウェブのようにフォントを指定してもそれでレン ダリングされるかどうか分からない,となると,だいぶ話は違ってくると思 います。 サイズ比率やベースライン移動の適正な値は,使うフォントによって違って しまうので,せっかく指定しても良い値でなくなるかもしれないですね。 (合成フォントという解決法の場合) font-size-adjust はたぶん DTP の合成フォントとは違って,エックスハイ トを元に自動調整するもの?ですよね。 これが和欧混植でうまく働くかどうかは,表示に使用されるフォント(の組 み合わせ)に強く依存する気がします。 実際にやってみないと私には皆目分かりません。 大きさ感を合わせることは,和文とアラビア系文字の混植でも重要で,同じ サイズを組み合わせるとアラビア系文字が小さく見えます。ことに Arabic Typesetting というフォントはかなり小さいです。 -- 道広勇司 http://moji.gr.jp/ http://moji.gr.jp/cafe/ http://twitter.com/horuf/
Received on Friday, 29 April 2011 08:24:59 UTC