Re: JFYI: tate-chu-yoko

Yasuo Kida 様

   小林敏です

Yasuo Kida さん wrote

> ah, I see. I have not read all comments but I need more concrete use cases w/ images to get a feel of how important it is.
> 
> 敏先生、文字幅を超えるような縦中横の重要性、どう思われますか?
> 
> 木田

4桁のアラビア数字が問題となっているようで,これはそれなりに
出てきますから,狭めたいというのは,当然に出てくる要望と思い
ます.字幕では行間も狭いでしょうから,あまり行間へのはみ出し
もできないでしょう.

なお,アラビア数字だけでなく,ラテン文字も縦中横にします.ラ
テン文字でも文字幅を超える例は,それなりにあり,少し程度であ
れば行間にはみ出せばよいのですが,いろんなケースを考えると何
らかの整理した方法は必要だろと思います.

個人的にいえば,文字幅を超えるような縦中横の重要性は,私はそ
れほど感じていません.なぜなら,私は問題のあるものは最初から
縦中横にしないからです.

しかし,私以外の人にとっては,かなり切実な問題かもしれませ
ん.特に自動処理を考えると必要性は高くなるでしょう.いくつ
か,これを考えるための背景などが知っておいた方がよいかもしれ
ませんので,この際,いくつかの問題点をまとめておきます.

縦中横を最初に採用したのは写研のSAPCOLだったと思います.こ
れを考えた際のメンバーである小野澤さんは,現在のような文中
(行中)に配置するのではなく,縦組での横組にした見出しなどを
処理したいがためだったような説明を以前されていました.ですか
ら,このような問題は,開発者にとっては想定外のことかもしれま
せん.

しかし,現在,最も使用されているのは文中(行中)に配置するケ
ースが圧倒的に多いので,“文字幅を超えるような縦中横”の問題
は,なんらかの対応が必要といえるでしょう.

次に,その重要性の判断ですが,日本語組版における数字表記の扱
いともからんできます.日本語の数字表記は,主なものとして漢数
字表記とアラビア数字表記があります.以前は,縦組では,原則と
して漢数字表記であり,それも十,百,千といった単位語を用いる
方式でした.ですから,この時代に二三人と書けば,23人ではな
く,概数の“にさんにん”と読みました.それが,徐々に単位語を用
いない方式となりました.ですから“にさんにん”は“二、三人”と書
かないと意味が通じなくなりました.

そうなると,縦組でアラビア数字にしてもよいのではという考え方
が出てきます.数字表記の能力というか,意味のとりやすさでいえ
ば,意見の違いがあるとしても,一般的にいえば,アラビア数字の
方がすぐれています.その意味でも,今日では,縦組でも圧倒的に
アラビア数字表記が多いでしょう.そうなると,西暦の4桁の表記
の使用も多く,これの処理は,当然に大きな問題となるでしょう.

となれば,横向きに文字を傾けるよりは縦向きの方が読みやすいに
決まっていますから,縦中横の使用が増え,その重要性も高くなっ
たといえます.しかも,ラテン文字の使用も,今日では増えていま
すから,その意味でも縦中横の重要性も高くなったといえるでしょ
う.

次に,どの範囲までは,つまり文字列の全長は,どこまで考えてよ
いかの問題です.日本語組版は,一般的にある程度の行間を確保し
ます.例外的な場合や辞書など特別の例を除いて,最低の行間は,
通常は文字サイズの二分と考えてよいでしょう.ですから,文字列
の全長は文字サイズよりは,ある程度は超えて,行間にはみ出して
もよいと考えてよいでしょう.

以下は,文字列の全長が文字サイズを超えた場合に限定します.こ
の場合の処理としては,以下のような方式が考えられます.

文字サイズや,文字の変形をしないで,そのまま平均に左右の行間
にはみ出す.

なんらかの処理を施して,文字列の全長をそこで使用して文字サイ
ズと同じにする.(ある程度はみ出しを考え,文字サイズの1.25
倍,あるいは1.5倍とすることも考えられます.)

文字列を狭める方法としては,以下が考えられます.
 文字を変形(長体に)する
 文字サイズを小さくする
 字間を詰める

字幕で問題としているのは,4桁のアラビア数字でしょう.和文と
組み合わせて用いるアラビア数字の字幅は,一般に二分です.です
から4桁ですと,文字列は2倍になります.ところで,活字組版時代
には,アラビア数字の字幅を四分とした例がありました.ですか
ら,4桁のアラビア数字を長体にして,文字列の全長を全角にする
ことは可能と考えてよいでしょう.

ただし,ラテン文字の変形は,一般に避ける傾向があるので,アラ
ビア数字と同様に考えてよいかどうかは,意見が割れることだと思
います.

ですから,縦中横の場合,以下の処理が可能になれば,よいかもし
れません.

文字列の全長は,デフォルトのまま処理する
これについては,以下の3つが考えられる

原稿段階で,縦中横にする要素で文字列の全長が一定の大きさを超
えるものは,縦中横の処理から除外しておく

これに加え,縦中横の文字の変形,文字サイズなどを指定すること
も可能なので,これと組合せてもい(自動処理にはなじまないが)

自動処理で,全長が一定の大きさを超えるものは,縦中横の処理を
除外する(ここでアラビア数字とラテン文字で別扱いができれば,
なおよい)

文字列の全長が一定の値を超えた場合は,自動的に一定の値に変え
る.
(変える方法は,選択できるのが望ましといえるが,デフォルトは
変形でよいかと思います)
ただ,この処理ではラテン文字を含めてよいかどうかは問題となる
でしょう.

さらに追加していえば,縦中横の処理で行間へのはみ出しが大きい
場合,前後の行に縦中横の文字が重なってしまう場合にどうするか
という問題もあるが,この場合は,自動的に行間を広げるという処
理も必要になるでしょう.

以上です.

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 小林 敏(toshi)  2019年 7月26日
 e-mail: binn@k.email.ne.jp
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Received on Friday, 26 July 2019 09:32:11 UTC