Re: 仮想ボディと外枠の関係性

木田泰夫 様
みなさま

 小林 敏 です.

  木田泰夫 さんwrote

>フォントサイズが異なる場合の位置合わせは下の理解で正しいですか?
>
>a. コンピューター組版では横書きでも基本は中央。
>b. 活字では中央が難しいので右寄せ・下寄せ。かつより小さいサイズに限る。
>c. デジタルでは、横書きでは特に調節しなければ欧文ベースラインが基準となるので、多くのフォントで全角を1000として上から880:120の線を中心に拡大縮小します。つまり、活字の下寄せに近い配置

aとbは正しい.ただし,bでは面倒であるが,やって出来ないことではない.ただ,私の経験からは,挿入の文字サイズは大きい例は,ほとんど活版では見ていないが,見出しではあったかもしれない.

cは,わからない.行送り方向の基準位置は,たぶん原点だと思うのですが,その原点の位置が分からない.

もっとも,和文に限れば,原点がどこにあろうが,その原点から行送り方向の仮想ボディのサイズ(及びその中での字面の実際の位置)は計算できるはずであるから,仮想ボディを基準に位置を指定しても問題なく処理できると思われる.あとはコンピュータがどう計算するかだと思います(そのことはユーザーにとって,とりあえず無関係ですが,私は知りたい).

和文だけで考えれば,欧文ベースラインが基準ということにはならないし,その必要性もないと思われる(ラテン文字と組合せる場合は必要になるが).

>…を考えると敏先生の、下のコメントが理解できます。
>> まあ,書いてもよいが,どちらでもよいと思っている.
>
>ただ、何か書くべきでしょう。どう書きましょう。どちらでも良いなら現在の880:120でも良いと言えますかね?

和文だけに限れは,それを書く必要性は,あまり感じられない.

次に和文に限り,例をいくつか挙げておきます.

1 一番多いのが,補足を括弧書きする例です(これも3つある).文字サイズを小さくする程度は1段階くらい(この段階はあとで説明する).
 1.1 全ぶ,本文と同じ.
 1.2 全ぶ,小さくする.
 1.3 内容により小さく,あるいは同号(私はこれ)
 単に,本文の説明を言い直すみたいな(2倍ダーシでくくるような)場合は同号,何々参照みたいなのは小さくする.ただ,3は面倒なので,最近はあまり見ない.
 これは,縦・横ともセンターでよい.実際にも,センターがほとんどじゃないかな.

この小さくするサイズは,けっこう面倒で,本文9ポの場合,8ポで安定していた(つまり見て区別できる)が,本文13級だと12級だと大きいし,11級では小さすぎ.写植(コンピュータ組版)では,0.5きざみでできるようになり,私は11.5級にしていた.最近は,より小さくする例も見掛ける.

ところで,和文活字の文字サイズは,以下のような大きさの系列が考えられ,準備されていた.(7.5ポなんて例外的な文字サイズを持っていた印刷所もあるが)

5ポ 4.5ポ,4ポ,(3.5ポ…準備していない印刷所もあり)……0.5ポきざみ
10ポ 9ポ 8ポ 7ポ 6ポ……1ポきざみ
20ポ 18ポ 16ポ 14ポ 12ポ……2ポきざみ
40ポ 36ポ 32ポ 28ポ 24ポ……4ポきざみ

これが私のいう文字サイズの段階です.

2 注番号は行間に,いってみればルビみたいに配置する方法と,本文の行の中に挿入する方法がある.後者は縦と横で,通常は異なる.
 2.1 縦組,文字サイズを2段階程度小さく…より小さくすると,センターはなんとなく安定しているようで,そうでないことと,注番号は,どっちかに寄せた方がいいというか,これまで,多くの例で寄せていたので,縦組では右寄せにするのがほとんどだし,その方が注番号として認識されやすいでしょう.
 2.2 横組,同号の上付きにする例がほとんど.これは文字サイズは同じ.ただし,上付きの字面は,本文の文字サイズの1/2ではなく,活版の9ポでいえば,5.25ポくらいの字面を使っていた.しかも本文の水平線より,やや上に,つまり行間にはみ出すようにしていた.InDesignでは,上付きの文字サイズも位置も調整できるので,私はそれなりにサイズも位置も調整して処理していたし,実際の例もそうした例が多いと思う.
 仮に横で,縦のような処理をしたい場合は,下寄せにするかと思います.

なぜ,こんな差があるかというと,縦組では上付きは,横転させるなど,ちょっと使いにくいからです.

右寄せ,又は下寄せという場合,小さい文字サイズの文字を仮想ボディの右または下でそろえるということです.

3 木田さんの例のように2段階近く小さくして,読みやその他の補足状況を示す(1の例外的使用かな?).これも,右寄せにした方が,本文との区別がついていいように私は思います.

4 最近,わりと見掛けるのは,見出しの“第1章”というラベル名を小さくする例がある.これはセンターでよい.

5 タイトルなどで,一部の文字(例:の)などを小さくする.かぎ括弧などもサイズを変えた例もある.まあ,これは個別処理で工夫することでしょう.

6 強調,ゴシックにして,1段階くらい文字サイズを大きくしたり,最近は本文の2段階から,3段階くらい,つまり極端に大きくして,語句を示す例がたまにある.これも縦横ともに,通常はセンターでよい.

7 割注(書名で割書きにする例)も文字サイズを小さくする例.その場合,割注も文字サイズは,本文サイズの1/2よりやや大きくするのが普通であるが,最近は,いろいろ可能なので,本文サイズの1/2という例もある.さらに割ルビといい,割注形式で本文サイズの1/2として括弧内に振り仮名を入れる例(行間が狭い辞書で使用例が多い)がある.2字以上は割書き,つまり2行になるが,1字の読みは,センターにする方法と,2行にする(2行目はナシ)とする方法とがある.この割注も,その全体で考えればセンターとなる.

漢文は,返り点と送り仮名,読み仮名がある.送り仮名,読み仮名は,ルビと似ているが,親文字との位置関係が異なる.

返り点も,いろいろな方法があるが,通常は,親文字の文字サイズの1/2にし,縦組でいうと親文字の直後の左寄せにする.なかには左寄せ+読点という例もある.JIS X 4051の37ページ以下に例がある.(ただし,漢文の教科書は文字サイズが大きいので,この方法とは異なる.)

>もしくはこのような場合にはこうする、と、目的別に書くのも一つの手かもしれませんね。
>
>行中でフォントサイズを変える場合ってどんな場合でしょうね。
>- 強調
>- 括弧付きで行中コメント
>- 括弧付きで行中ふりがな
>- 行中ふりがなでこの間お見せしたような漢文の送り仮名のような書き方(添付のイメージの「女性ヒト」の例)。今気がついたのですが、カタカナなら括弧が無くても本文かのような誤解をしにくいですね。
>- 漢文の送り仮名や返り点??
>- 注釈番号は上付き下付きで処理する
>
>で、ここに見るように目的によって違うので、位置の調節ができることが重要、と書く、とか?

Received on Sunday, 28 July 2024 01:00:37 UTC