- From: Kobayashi Toshi <binn@k.email.ne.jp>
- Date: Wed, 07 Dec 2022 09:32:44 +0900
- To: Koji Ishii <kojii@chromium.org>, Taro Yamamoto <tyamamot@adobe.com>
- Cc: 木田泰夫 <kida@mac.com>, W3C JLReq TF <public-i18n-japanese@w3.org>
石井i 様 山本 様 小林 敏 です. 技術的なことは,よくわかりませんので,“す。”の字間を詰める問題に限り,コメントさせていただきます. まず,“す。”の字間を詰めたいという要望は理解できます.例は頻出します.しかし,以下のような問題があります. 1 “す。”の字間は横組では詰めてよいが,縦組では詰める必要はない.もし,自動処理で字間を調整する場合,縦組と横組で指定を変えないといけない. 2 字間の問題は,“す。”だけに限られない.句点との関係でいえば,“い。”は“す。”より頻度は少ないがある.この例では縦組では詰めたいが,横組ではつめる必要はない. 3 その他の仮名や漢字に組合せも,多くの箇所で詰めたいとなる例がある.例えば,漢字でも例があり,“口”の字はリュウミンとイワタ明朝を比べてみると,イワタ明朝(最近の“中公新書”は,イワタ明朝を使用している)は,かなり字面が小さい.したがって,文字の組合せで詰めたいと考える人は出てくるでしょう.つまりフォントにより詰めたい箇所は異なる場合がある. 4 一般には,文字の字面の大きさも,その字の特徴を示し,アキがあることが,その字を認識する助けになる.したがって,ラテン文字のようにすべての字間の見た目のアキが同一になるようにすることと違って,和文では,字間が他と異なるからと言って,すべての字間を調整することが正解とはならない.例として,“くく”という文字連続する例はたまに見かける.これをプロポーショナルな和文で組むと,一瞬,“く”と“く”と認識できず,え!これは何!と思った経験は何回かある. 5 ただし,ある程度の自動的に字間を調整できるのなら,それはそれで調整したいという考えもある.この字間を詰めたいという要請に応える場合,“す。”だけでなく,多くの箇所が問題となるので,やるのなら,全部やりたいとなる.なら,プロポーショナルの和文フォントを使えばよいということになる. 6 特に問題のある箇所だけで詰めたいということなら,そのように考えるフォントメーカーが,そのためのカーニングテーブルを作ればよい.その場合,“す。”だけのカーニングテーブルを作るのかといえば,それはありうるが,たぶん,もっと広い範囲で作るのではないか.“す.”“す、”“す,”は同様に問題になるだけでなく,縦組用のカーニングテーブルと横組用のカーニングテーブルを作る必要がある.さらに,考えていくと,文字の組合せは膨大になる可能性があるので簡単ではない.ただし,要望の多いものだけに限定して,限られた縦組用のカーニングテーブルと横組用のカーニングテーブルを作るという方法は考えられようが,たぶん多くの人を納得させるテーブルの作成は,相当に困難でしょう. 7 詰めたいという要望は,特に見出しなど大きな文字の場合に考えられる.この場合は,文字の組合せ,さらに文字サイズにより詰めたいという箇所だけでなく,詰める量は,異なってくる.詰めたい箇所は,縦組用と横組用の膨大なカーニングテーブルを作れば解決できるが,文字サイズにより詰める量を変えるのは簡単でない(一律なら可能であろうが,要望に応えられるかどうかはわからない).デザイナーの考え方も同一とはいえないので,さらに難しくなる.(書籍のタイトルなどでは,極端な例として,字面そのものも変えたいという要望もあるし,実際にも行われている.つまり要望は際限がないので,ある程度の妥協も必要である.) したがって,“す。”に対応するには,以下のような方法があるように思いますが,現実的には,(1)か(3)ではないかな.つまり要望は認めるが,やりたいなら(3)でやってね,ということはあるのではないかな. (1)プロポーショナルの和文フォントを使う. (2)限られた文字の組合せについて,縦組用のカーニングテーブルと横組用のカーニングテーブルを作る. (3)個別箇所でなんらの方法で,必要な箇所を詰める指定を行う.
Received on Wednesday, 7 December 2022 00:35:27 UTC