両端揃えと行頭揃え (was RE: web における和欧間スペース

石井さん、


  *   携帯の画面の10字とか20字詰め(行当たり字数)の世界で、例えば「?!」の行頭禁則を処理すると、3文字が次行に送られます。これを両端揃えすると、1/10em~1/5emくらいの字間が空きます。これはこれで、すごく気になる。その一行がまるまる読みにくくなる。

最近では、携帯電話でも、画面の解像度が高くなっているので、異常に狭い行間に設定する必要性は減っていると思います。
たしかに行長10文字では、欧文の単語が分割不可能な場合などにスペースが開きすぎる場合が発生するのは避けられないでしょうけれど、それが平均的な状況ではなくなっているのではありませんか。

いくつか、行長字詰め10文字にして、欧文の単語、連続する「??」、不必要なカギ括弧などを挿入して禁則とか破綻が起こりやすそうなテキストを作って実際に試してみたのですが、InDesignを使った場合、弱い禁則+単数行コンポーザー+追い出し優先で組んだ場合に比べて、弱い禁則+段落コンポーザー+調整量優先で組んだ場合には、極端な例でも、かなり破綻が避けられ、改善がみられました。禁則処理の仕方やスペースの調整方法によって、短い行長に対してもある程度柔軟に対応できるようになるのではないでしょうか。


  *   実は過去10年~20年くらいは私も「なにかが足りないから、Webでは両端揃えを断念している」と思っていました。でも今は、デジタルにおける前提条件の違いから、意図的に行頭揃えを選んでいると思っています。まぁ、ここは推測なので、議論して結論がでるものではありませんが。

「通常、日本語は行頭行末揃えする」ということを知らなかった人が、最初は行頭行末揃えができない状況でWeb文書を作成し、あるいは行頭行末揃えが選択可能になっても、そこで利用できる行頭行末揃えが、すぐにスペーシングが破綻してしまうようなものでしかなければ、当然、行頭行末揃えを忌避することは、仕方がなかったのでしょう。今でも、そうするしかない、と考える人が多くいても、やはり不思議はありません。

デフォルトが行頭揃えなのですから、今後も、行頭行末揃えをしないことが当然と考える人々が増え続けても不思議ではありません。そして、行頭行末揃えが選択できても、日本語の行頭行末揃えに最適化されていないやり方でなされて、破綻が頻繁に発生するのであれば、やはり、「行頭揃えの方が良い」と考える人は多く残る、あるいは、さらに増え続けるでしょう。

「Webでは両端揃えを断念」しているのではなく、そんなことははじめから念頭にない人が増えているのでしょう。であれば「どうしたらより破綻の少ない日本語での行頭行末揃えができるようになるか」などということを問う人は、いるはずがない。少なくとも利用者の側には。

そして、デフォルトを変えたりしない限り、この状況は変わらないわけですから、あえて今から、みんながそうしているからという理由で「行頭揃え」を追認したり推奨する必要もないわけです。むしろ、行長の変化に対して十分柔軟性のある行頭行末揃えを日本語テキストに対して行えるようにして、その選択肢を与えることの方が、自然な日本語の組み方を普及する上では理にかなっていると思います。

そもそもはじめから日本語では段落最終行以外の行頭行末揃えをデフォルトにしておけば良かったと私は考えます。そうすれば、その時点で、通常の使用において破綻しにくい日本語の行頭行末揃えを行えるようにしようという努力も、今以上になされたのではないかと推測します。デフォルトを変えるのが無理だったとしても、日本語については、行頭行末揃えがもっと広く推奨されていれば、同じ効果があったかもしれません。

山本太郎

Received on Saturday, 16 July 2022 01:41:25 UTC