第7回SVG IG Japanミーティング議事録 - 2010年2月23日

皆様,

W3C/慶應の芦村です.

いつもお世話になっております.

2月23日に開催されたミーティングの議事録をお送りいたしますので,
よろしくお願いいたします.

Kazuyuki

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第7回 SVG IG Japan ミーティング
2010.02.23

機械振興会館B2階 JIPDEC会議室

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出席者
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JIPDEC 高嶋
Canon 藤沢
マイクロソフト 五寳
KDDI 高木
Mozilla Japan 木島 (オブザーバ)
Mozilla Japan 加藤 (オブザーバ)
千葉商科大学 久保 (オブザーバ)
W3C/慶應 芦村
W3C/慶應 スミス
インディゴ 松澤
JIPDEC 須永

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議事
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1. SVG Open 2009発表紹介 (久保)
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* 久保先生は慶應SFCのOB

* SQS SourceEditor: Shared Questionnaire System
- OCR/OMR帳票向けの,オープンかつ拡張可能なフォーマット

- 単なるWYSIWYGでなく,内容と表現を分離することにより,使い捨てのフォー
  マットであったものを再利用する仕組み

- SVG Printベースで,メタデータを付与
- W3C標準のXMLデータで調査票の論理的構造を作成
- XSL-FOを使ってPDF生成 + SVG Printを利用するパスも
- iTunesのような結果閲覧GUI

- 今までの「Closedな調査」から「Openな調査」へ
- 調査結果を共有財化

Q&A:
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藤沢: SVG利用の利点

久保: PDFの中にメタデータを埋め込むという方法もあったが,PDFのパーズ処
理は重いので,(テキストフォーマットである)SVGを利用した方がメタデータの
付与がしやすい.

ページ情報,自由記述とマークの識別等

学校の教員から,テストの採点に利用できるようにして欲しいという要望
MathML等の取り込みも可能か?
京都市の全小中高幼等で利用されている

藤沢: 今後の標準化の課題は?

久保: 調査票のSVGにメタデータを埋め込んでいくが,最終的な集計結果の整理・
表示に役立つ情報・語彙

  e.g., 表示形式 (円グラフ/棒グラフ)や集計のカテゴリ (男女別)

芦村: Semantic Webのライフサイエンスとの統合もありえる

久保: 情報の再利用のために,組織を越えた共有化が必要

芦村: 現状ではデータ生成と印刷までの出力の自動化だが,今後,タッチパネ
ル/スキャンとの連動を考慮して手書き入力の認識も含めた取り組みはありうる
か?

その場合,W3Cの手書き入力仕様であるInkMLの利用は考えられるか?

久保: 今のところ,手書き結果は画像ファイルで,必要に応じて手入力してい
るが,今後,プラグインで自動認識の可能性もある.

ただし,現時点では,日本語に特化したフリーの認識エンジンがない...

なお,現在,各種学校で利用されているが,統合DBで一環管理できるとよいか
もしれない


2. W3C日本会議とHTML5 IG Japan報告 (芦村)
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* 芦村から簡単に報告
- HTML拡張におけるMMIの可能性
- SVGフォント利用の可能性

Q&A:
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藤沢: SVG IG JapanとHTML5 IG Japanとの連携は?
SVG IG JapanはJIS化に特化した部分があるが,今後の連携について

高木: HTML5 IG Japan会議ではパネルディスカッションがあったが

芦村: HTML5 IG Japan会議参加者には,「SVG IG JapanとHTML5 IG Japanの連
携」については,(少なくとも現時点では)あまり興味なかったのでは?

ルビ等,日本語レイアウトに関するメーリングリスト上の議論が,両IG JP連携
のきっかけになるかもしれないが

藤沢: HTMLに興味のある人々にSVGを紹介していく必要?

高木: HTML5は技術仕様としての価値のみならず,ブランドとしての値打ちがあ
るという意見もある.

それに比して,SVGは少しマニアックな印象

個人的には,SVGに取り組む理由は,Webブラウザに標準で載るべき技術と思わ
れるため

藤沢: HTMLのコミュニティにもっと近づくべき?

高木: 1/22のHTMLグループ会議の中で,二割くらいはSVGに関連した内容であっ
たとは思う.

藤沢: 共同会議の開催等どうか?

Mike: いいと思う.HTML5 IG JPは今のところあまり活発ではないので,ジョイ
ント会議は活動の活性化に役立つと思われる.

今のところ(ここ一ヶ月程度),HTML5 IG JPのf2f会議は考えられていないが,
例えば,3月くらいに共同会議を行なうのはよいのではないか.

木島: 協働はよいことだが,仕様決定のための議論は難しい
デモやショーケースがあればもっと人が集まるのではないか.

(Googleのメーリングリスト等で) HTML5の議論が盛り上がっているのは,
HTML5によってWebアプリケーションがおもしろく(動的に)なっていることがあ
ると思われる.

五寳: HTML5とSVGの関係についても,もっと説明していくべきと思う.

藤沢: もっと幅広く呼びかけていってもよいように思う.
HTML5に興味のある人々の中には,SVGにも興味のある方がおられると思われる
ので.


3. HTML5とSVG (Mike Smith)
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* Mikeから簡単に自己紹介

* HTML5仕様の説明
- HTML自体だけでなく,(Webブラウザ等)UAの振る舞いについても記述
- ドキュメント解析アルゴリズム (XMLパーサとHTMLパーサ)
- SVG用のDOMツリー作成自体はHTML仕様の範疇外 (XML仕様で規程)

* 名前空間のないモード(HTMLとしての処理)での拡張性
- 8.2.4.38 Attribute value (double-quoted) state
  http://dev.w3.org/html5/spec/Overview.html#attribute-value-double-quoted-state
- DOM構築後は(例えばSVGの)DOMサブツリー中で名前空間を認識

* HTMLモード処理について
- HTMLパーサは,HTML仕様自体に非常に強く依存している (TreeBuilder.java)
- 例: Firefox 3.6のユーザ設定 (about:config) 中の「html5.enable」を設定
  すると,HTMLモードの処理を行なう

* HTMLにおけるSVGの取り込み処理について

http://dev.w3.org/html5/spec/syntax.html#parsing-main-inforeign
  HTML5 A vocabulary and associated APIs for HTML and XHTML
  の 8.2.5.21 The "in foreign content" insertion mode

* SVGにおけるCSSの扱い (style.filter)
- ブラウザ間におけるプロパティ名の不整合
- SVG機能をHTML5へ統合するにあたって,SVGのfilterプロパティとMS独自仕様
  のIE filterプロパティが衝突する,という問題がある
- 対策: MSが "filter" を "ms-filter" に変更 (長期的)

cf. http://my.opera.com/hallvors/blog/2010/02/16/svg-adds-style-filter-now-where-have-we-seen-that-before

* その他考えられる問題
- HTML5中にインラインで埋め込まれたSVGコンテントを取り出して(HTMLパーサ
  でなく)SVGパーサで処理した時,処理できない危険性

高木: 逆にConformant SVGをHTML5に埋め込んだ場合は?
パフォーマンス(処理効率)上の問題も考えられる

SVG Tiny 1.2に特化してチューンしたSVGがありえるか?

加藤: SVGでは拡大縮小が多いと思われるので,それが処理上のネックになる可
能性がある

高木: データ格納上の効率は(DOMツリー)ありえるか?

加藤: DOMツリーがどの程度深くなるか,要素の数にも依存する.
DOM処理自体の改善によるのでは?

五寳: 利用形態にも依存すると思われる.例えば,「画像を保存」といったこ
とをSVGに対してもやりたくなるかどうか.

松澤: ハードウェアレンダリングの利用により (OpenGLのように) SVG処理が加
速する可能性もあるのでは?

具体的なサービスではトップのSVGはコンテナで,具体的な地図情報等は外部参
照となると思われる.

高木&五寳: 地図情報はどこまで保存対象とするか?

藤沢: SVGエレメントをHTML5のトップレベルエレメントとして利用できるか?
text/htmlのMimeタイプを持つSVGということになるが.

Mike: ありうるかもしれない.

藤沢: <html> や <body> がない場合は,HTMLパーサが補って処理をするので,
いきなり <svg> と書いた場合も,同様な補完が働いてHTMLパーサが処理できる
可能性があるのでは?

Mike: できそう

[その他,以下のような技術項目に関する議論もあった]

HTML5からのSVGコンテナ参照
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* HTML5ドキュメントから,<img> エレメントを利用してSVGコンテナを参照し
  た場合について

- インタラクティブな利用は可能か?
   embedエレメント,object, script などを利用したSVGコンテナの参照は?

藤沢: HTML5仕様ではアニメーションSVGは利用できるが,スクリプトを含むイ
ンタラクティブなSVGは<img>要素では参照できないことになっている.代わり
に<object>要素や<script>要素を利用するなどしてこれを回避することは可能
か?

Mike: UAに依存するのでは?  現状どうなっているか不明.
Operaではすでに静的,アニメを含めて<img>で取りこめるが.

- 独自の要素や属性を追加した拡張SVGコンテンツは利用できるか?

Mike: HTMLパーサではSVGの属性や名前のいくつかを,リストとしてハードコー
ドしている (フィルター要素名などを小文字にするため).それら以外について
はSVG DOMツリーが期待通りに生成されると考えられる.

藤沢: SVG Tiling and Layering仕様では,SVG Tiny 1.2に対していくつか新し
い要素や属性を導入している.これらが問題なく利用できるかどうか,特に
HTML5にSVGをインライン記述した場合の動作について確認してゆく必要がある.

Mike: 要素名の衝突が起きないように注意する必要がある.

HTML5からのSVG地図データ参照
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* SVGコンテナをHTML5にインライン記述した場合について

- HTML5にSVGをインライン記述する場合,SVGとXLinkの名前空間を宣言しても
しなくても良いことになっている.どちらのスタイルが推奨されるのか?

Mike: 推奨は特にないが,ベストプラクティスという意味では,名前空間を明
示的に宣言するほうが良いと思われる.HTML以外の名前空間のXMLフラグメント
が含まれていることが明確に示されるため.

芦村: HTML5の本体には名前空間は記述しないが,その中に含まれるSVGフラグ
メントの中で名前空間を宣言するという意味?

藤沢: その通り.
正しい名前空間ならば,フラグメント中で付加してもよい仕様になっている.

ただし,付与するべきかどうか,どういう形で付与するのがよいかは要検討
(XLinkも含めて).

SVG地図とGeolocationh API
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- WebブラウザでSVG地図アプリを利用する場合,問題なくGeolocation APIと連
  動できるか?

松澤: SVG固有の問題というより,HTML5の機能として利用できるので問題ない
と思われる.

Firefox等で確認したが使えそう.

高木: 仕様上の変更は不要?

松澤: 精度情報等も利用したい.

藤沢: Geolocation APIはNavigatorインタフェースを前提としているが,これ
は,通常Webブラウザに対応するオブジェクトで,SVGビューアでは提供されな
い.したがって,SVGビューア単独ではGeolocation APIを使えないということ
になるが,それで問題ないか?

高木: 今後は専門のSVGビューアよりも,Webブラウザが前提となるのでは?

SVG 地図でのWeb Socket活用
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* タイリングされたSVG地図を効率的かつ部分的に読み込むためにWeb Socketを
  活用できるかもしれない.リファレンスドキュメントのメニュー表示をAjax
  ではなくWeb Socketで実装した例があり,よい結果が得られている.

cf. 高橋登史朗氏によるWeb Socket実装の例: http://bloga.jp/ws/jq/ref/

サブセット利用のガイドライン (必要性と可能性)
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高木: "One Web" の方針からすると,全機能の実装を作るべき.
ただし,パフォーマンスを考慮すると,サブセットも有用と思われる.

藤沢: 携帯電話用ブラウザベンダ等,サブセットについて検討している場合も
あるように見受けられる.


4. 日本地図のSVGデータ化 (高木)
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* 国土地理院が25000分の1のSVG地図を整備中
- Creative Commons ライセンス (商用利用も可)
- 山岳地を含めて全国の地図 (Google Maps には含まれない地域も含めて)
- 等高線や住宅情報との重畳
- 各情報の管轄官庁が異なるという事情もあり,地名等文字情報も全て別レイヤ
  で記述されている.
- 三月半ばに公開予定 (GISの人々にも告知)

久保: 情報のレベルに応じて課金するようなビューア/サービスの予定は?

高木: 公開してあれば見られるようにする試みであり,今のところ有料サービ
スではない.今後,有料サービスサイトが出てくるかもしれない.

世界最高レベルのデータをフリーで公開すれば,SVGのサービス応用も出てくる
のでは?


5. SVG JIS規格化の最新動向紹介 (JIPDEC)
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* 現在,SVG Tiling and LayeringのJIS化に取り組んでいる
- 本日(本SVG IG JP会議の直前)に委員会が開催され,各機能について議論
- 日本規格協会からJIS規格書として(有料)公開

* SVG Tiny 1.2のJIS化にも取り組んでいる
- 日本語化が完了し,JIS文書として清書していく.
- H23年を目処にJIS化


6. SVG Tiling and Layering 仕様 (藤沢)
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* 特許関係等,公開形態についてW3C Teamと調整中


7. CSS/SVG Effectsタスクフォースの設立 (藤沢)
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* CSSとSVGのビジュアル効果仕様のセマンティック共通化
- 語彙の統一を含めて (Syntaxは仕様によって違うが表現内容は同じなので)
- キックオフの電話会議を本日(2/23)開催
- Animations, Transitions, Transforms, Gradients, Filters


8. SVG描画順序の指定機能について (藤沢)
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* 詳細議論は今後継続
- 様々な案 (render-order/z-index/z-depth)
- z-indexによる指定で必要十分か?

高木: 等高線でz-depthは利用可能か?

藤沢: ちょっと不明...

z-depthでは,単に順序だけでなく座標も定義し, 座標が前に来ているものは
順序を優先

ただし,完全な3Dではなく,回転処理等の中心座標が代表点になる

高木: 地図では,フルの3Dではなく2.5D処理と呼ばれる処理が対象

例えば等高線は一定の高さを持っていて,それ自体が上下することはないので,
z-depthは親和性がよいように思われる


9. 今後の活動
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* 現状のTiling and Layering仕様をどのような形でレビュー/公開していくか

* HTML5 IG JPとの連携

* WebフォントとSVGフォントの関連

* MIX 2010 (Mar. 15-17) でのSVG関連セッション

* SVG Open 2010は8/30からパリで開催

* 次回ミーティング
- 次回SVG JIS委員会と併催 (4-5月?)

以上

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Kazuyuki Ashimura / W3C Multimodal & Voice Activity Lead
mailto: ashimura@w3.org
voice: +81.466.49.1170 / fax: +81.466.49.1171

Received on Sunday, 28 February 2010 07:02:54 UTC